破産財団とは?意味や含まれる財産の範囲、換価基準と自由財産も解説

破産手続が始まると、破産者が持っているすべての財産は「破産財団」としてまとめられます。この破産財団は「自由財産」とは異なるものとして扱われ、破産管財人によって管理・処分されることになります。

この記事では、法人破産を行うケースを念頭に置いて、「破産財団」という用語の持つ意味や該当する財産の範囲、自由財産との違いなどについてわかりやすく解説します。​​法人破産の実施にあたっては、破産財団の概要を把握したうえで手続を進めましょう。

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破産財団とは

破産財団とは、破産手続において破産宣告を受けた者(破産者)の資産を一時的に管理・処分するために設けられている法的な枠組み(概念)を意味します。「財団」という名称から組織や団体を連想する人もいますが、財産の集合体を想像すれば、破産財団の全体像を理解しやすくなるでしょう。

より詳細に述べるならば、破産財団は、破産法第2条第14項において「破産者の財産または相続財産もしくは信託財産であって、なおかつ破産手続において破産管財人にその管理・処分を担う権利が専属するもの」と定義されています。

破産手続が始まると、破産者が有している財産すべては破産財団としてまとめられて、破産管財人によって管理・処分が行われます。通常、破産管財人には、弁護士が任命されることになります。

理論上、裁判所は弁護士資格を持たない人であっても破産管財人に選任できるものの、破産管財人の業務を適切に行うためには破産法を深く理解していなければならないため、現実問題として弁護士以外の人が破産管財人の業務を行うことは不可能に近いとされています。

破産財団の主な目的は、以下のとおりです。

目的 概要
債権者への公平な分配 破産者の財産を適切に処分し、その収益を債権者に対して公平に分配することで、債権者間での取り立て競争を防止し、破産者に対する適切な債務整理を実現する
破産者の生活再建 破産者が持っている財産を処分し、適切な債務整理を行うことで、破産者は債務の負担から解放されて新たな人生の再スタートを切る環境を整えられる

破産財団の内訳

破産財団は、大まかに以下3つの概念に分けることができます。

内訳 概要
法定財団
  • 破産法第34条や第78条1項などが示しているもので、本来あるべき破産財団の形を意味する概念のこと。
  • 法定財団に含まれる範囲は、破産法第3条および6条により決定される。
現有財団
  • 破産管財人が破産財団に属すると認め、現実に占有管理している財産の集合体のこと。
  • 「実在財団」や「組入れ財団」といった呼ばれ方もしている。
  • 現有財産と法定財産が必ず一致するとは限らず、両者を合致させるのが破産管財人の職務とされる。
配当財団 現有財団から財団債権や別除権などが弁済されることで、その財産が整序された結果として、最終的に破産債権者のための配当に充てられるべきものとして確定された財産のこと。

破産財団の法的性質

破産手続において、破産者となる法人の財産が破産財団として扱われるにあたってさまざまな法律関係が生じますが、破産財団の捉え方については争いがあります。

中でも破産財団と破産管財人の関係性という観点では、大まかに分けると以下のような見解が存在します。

見解 概要
破産財団代表説
  • 財産の集合体として破産財団そのものに法人格を認めて、破産管財人をその代表者として捉える見解のこと。
  • かつての通説とされている。
管理機構人格説
  • 破産財団の管理機構である破産管財人に法人格を認めて、この管理機構を担任する者を破産管財人と定義する見解のこと。
  • 管財人の概念に2つの意義を認めるもので、最近の多数説とされている。

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破産財団に含まれる財産の範囲

破産財団には、破産手続開始決定のタイミングにおいて破産者が有している一切の財産が含まれます(破産法第34条第1項)。このように、破産手続開始決定のタイミングを基準に破産財団に含まれる財産の範囲を固定することを「固定主義」といいます。

ここでいう「財産」に関しては、日本国内だけでなく、海外に存在するものも含まれます。加えて、破産手続が始まった後で生じた請求権についても、破産手続開始前のタイミングに発生原因があるものについては破産財団に含まれる点に注意しましょう(破産法第34条第2項)。

破産財団に含まれる財産の具体例・種類

破産手続開始決定のタイミングで存在する破産者の財産は、後述する「自由財産」に当てはまらない限りは、基本的に破産財団に組み込まれます。破産財団に組み込まれる可能性がある代表的な財産は以下のとおりです。

種類 具体例・補足
不動産・動産
  • 例:99万円を超える現金、預金、高額な動産など
  • 共有持分権に過ぎない場合であっても、その共有持分については破産財団に含まれる(破産法第52条)。
  • 破産管財人は、その他の共有者に対して共有持分の買取を打診したり、共有物を売却したりして、その共有持分を換価する。
権利
  • 例:債権、期待権、物権的請求権、知的財産権など
  • 金銭的価値の付く権利については破産管財人により換価が行われ、債権者への配当原資とされる。
情報資産
  • 例:商号、製造上のノウハウなど
  • 金銭的価値を有するものと評価される場合は破産財団に含まれる。

破産財団に代表者の財産は含まれるのか?

基本的に法人は個人とは別の法的主体であり、法人破産と代表者個人の破産は区別されるべきです。したがって、法人が破産手続を行う際には、通常、その代表者個人の財産は破産財団には含まれません。しかし、以下のような特殊な状況下において、破産した法人の代表者の財産が破産財団に含まれることがあります。

ケース 概要
代表者が法人の負債について連帯保証人になっている
  • 代表者が連帯保証人として法人の負債を保証している場合、法人が破産した際に連帯保証人である代表者が債務を履行する責任が生じる。
  • その結果、代表者の個人財産がその債務の弁済に充てられることがある。
不正行為や詐欺行為などがあった
  • 代表者が法人を利用して不正行為や詐欺行為を行った場合、法人の破産手続において、代表者の個人財産が破産財団に含まれることがある。
  • この場合、代表者は法人と個人の財産の区別が失われる「財産の混同」や、法人格の濫用が認められると判断されることがある。

代表者個人の財産が破産財団に含まれるケースの判断については、弁護士のアドバイスを受けることが重要です。

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破産財団に含まれない「自由財産」とは

破産手続が始まると、破産者の財産は破産財団としてまとめられた後、債権者への弁済に充てられますが、破産者には生活に必要な最低限の財産が保障されることが法律で定められており、この最低限の財産を「自由財産」と呼んでいます。

自由財産は破産財団には含まれず、破産者が手元に残しておくことが可能です。なお、法人破産においては自由財産という概念は存在せず、法人が有していた資産に関しては、それをすべて換価し債権者への配当に充てるのが原則です。

自由財産の代表例は以下のとおりです。

差押禁止財産

差押禁止財産とは、たとえ裁判所で差押えの手続が行われたとしても、差し押さえることができない財産をさします。債務者の生活保障の観点から、債務者やその家族が生活していくうえで欠かせない必要最低限度の財産は法律で守られているのです。

差押禁止財産には、以下のような種類があります。

種類 該当する一例
差押禁止動産(民事執行法第131条)
  • 生活必需品:衣服、寝具、家具、調理器具など、破産者とその家族が日常生活を営むために必要な品物。
  • 勤労手段:破産者が働くために必要な道具、機械、器具など(例:農業や漁業を営む破産者であれば農具や漁具など)
差押禁止債権(民事執行法第152条)
  • 給与や報酬:給与、賞与、退職金に関する債権の4分の3に該当する部分。
  • 社会保障のために受給する権利:国民年金、厚生年金、健康保険、生活保護給付金など。

破産財団からの放棄がおこなわれた財産

破産財団からの放棄とは、もともと破産財団に属していた財産について、裁判所の許可を得て破産管財人が放棄することです。破産財団から放棄された財産は自由財産となるため、債務者は手元に残せます。

例えば、市街化調整区域の田・畑、山奥の崖地といった処分の困難な土地の場合、裁判所からの許可のうえ、破産財団から放棄されるケースがあります。

自由財産の拡張が認められた財産

自由財産の拡張とは、もともと破産財団に属している財産について、申立てもしくは裁判所の職権に基づいて自由財産として扱う決定をすることをさします。

例えば、東京地裁では「20万円以下の預金」や「20万円以下の車」などの財産について、基本的に自由財産の拡張を認めています。

破産手続開始決定後に取得した財産

破産手続開始決定後に築き上げた財産は、破産手続が継続中であっても破産者本人の管理・所有する財産となります。つまり、破産財団とはなりません。

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破産管財人による破産財団の管理・処分の業務

最後に、破産管財人による破産財団の管理・処分の業務内容について解説します。

  • 破産財団の変動・形成
  • 破産財団の換価と配当

破産財団の変動・形成

破産財団の変動・形成に関する破産管財人の主な業務は以下のとおりです。

業務内容 概要
財産の調査・管理
  • 破産者の財産を調査し、破産財団として把握する。
  • 破産財団に含まれる財産の管理も行う。
債権者への報告
  • 破産財団の状況や処分に関する進捗を債権者に報告する。

財産の調査については、調査の方法は特別に定められているわけではありません。破産者側からの聴取や報告、各種帳簿類や資料の精査、現地での確認、関係者や債権者からの情報提供、各機関に対する照会などによって破産財団の調査を行います。

なお、本来ならば破産財団に含まれるはずであった財産が破産手続開始前に流出している場合、否認権を行使し流出した財産を取り戻す措置を講じる場合もあります。

また、一見すると破産財団に属する財産であるかのように見える財産が実際には第三者の財産であるという場合、真正の所有者からの取戻権行使に対応し、どの財産を返還するなどして適正な破産財団を整える措置を行うこともあるのです。

そのほか、破産財団に属する財産に担保権が設定されている場合、担保権者による別除権行使に対応することもあります。

破産財団の換価と配当

破産財団の換価と配当に関する破産管財人の主な業務は以下のとおりです。

業務内容 概要
財産の換価・処分
  • 破産財団に含まれる財産を適切な方法で処分する(例:不動産や株式などの売却)。
  • 最も高額で換価できる方法で換価処分しなければならない。
債権者への弁済・配当
  • 弁済または配当に充てる破産財団を収集できた場合、確定した債権に対して弁済、配当していく。
  • 破産法で定められた算定方法に従って各債権者に対する弁済または配当の金額を正確に算出し、それに基づき公租公課などの財団債権に対して優先的に弁済を行い、破産債権に対して配当を行う。

まとめ

破産財団とは、破産手続において破産宣告を受けた者の資産を一時的に管理・処分するために設けられている法的な枠組みのことです。

法人破産の手続を進めていく際は専門的な判断や知識が求められるため、法人破産の実施を検討したら弁護士に相談することが望ましいです。

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    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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